(背伸びする感じで)ん゛ん゛…。
やっと、終わったぁ…。
先輩、ありがとうございました。
こんな遅い時間まで付き合ってもらって…。
俺がもっと要領よく仕事できれば、先輩に迷惑をかけなくてすんだのに…。
すみませんでした。
あとのことは俺に任せて、先輩は先に帰ってください。
隠してるみたいだけど、バレてますからね。
足元の小さな紙袋。
中身、チョコでしょ?
急げば今日中に渡せますよ。
いやいや。
『もういいの』じゃないですよ。
夜遅いけど、まだバレンタイン。
自分の気持ちを伝えるチャンスを
後悔しますよ?
絶対に。
『あの時告白してれば…』ってね。
やらないで後悔するより、やって後悔しましょうよ。
もし、うまくいかなかったら、明日2人で飲み会しましょ?
ヤケ酒、とことん付き合いますから。
うまくいっても、飲み会しましょうね。
その時は祝杯になりますけど。
ほら。
グダグダしないで、急いで。急いで。
荷物、パパッとまとめちゃってください。
それで全部ですか?
忘れ物ないですね?
じゃぁ、いってらっしゃい。
(先輩がチョコが入った紙袋を差し出してくる)
えっ……何?
このチョコ…俺に…?
嘘だ…。
だって、先輩の気になる人って年上の人でしょ?
俺、聞いちゃったんですよ。
ちょっと前に、先輩たちが恋バナしてるの。
その時、先輩は『包容力があって、経済力があって、優しい年上がタイプ』って言ってました。
年下の俺は、どんなにがんばっても先輩の理想に
だから、諦めたんですよ。
先輩に自分の気持ち伝えるの。
どんなに思ってても、彼氏として先輩の隣には立てない。
だったら、ただの後輩のままでいようって、無理矢理自分を納得させたんです。
そうすれば、仕事の時だけは先輩の1番近くにいられるから。
迷惑なわけないじゃないですかっ!
すっごく嬉しいです。
でも、なんで、あんなこと言ったりしたんですか?
『恥ずかしかった』?
へぇー。
先輩でも恥ずかしいって思うことあるんですね。
…なんかかわいい…。
先輩……1つだけ、確認してもいいですか?
ほんとに俺が彼氏でいいんですか?
自分で言うのもなんですけど、独占欲強いし、ワガママだし、気まぐれだし…。
俺が女だったら、絶対彼氏にはしたくないタイプですもん…。
今なら、『やっぱ、ナシ!』って言ってもいいですよ。
いいんですね?
後悔しませんね?
……ありがとうございます。
あの…抱きしめたら、ダメですか…?
どうしても抱きしめたくて…。
ほんの少しでいいので…。
(先輩を抱きしめる)
俺も、先輩のことが好きです。
大好きです。
誰よりも幸せにするって約束します。
(先輩と体を離す)
あっ!
時間!
すっかり忘れてた!
終電大丈夫ですか?
あぁ…やっぱり…。
俺の方も終わってます…。
タクシーで帰るにしても、かなりの金額いっちゃうしなぁ…。
……先輩さえよければ、どこか泊まりませんか?
もう少し一緒にいたくて…。
…なーんてね。
今のは冗談です。
いきなりこんなこと言ったら、体目当てみたいですよね。
すみません。
忘れてください。
えっ……ほんとに…?
行くっ!
行きますっ!
すぐ帰る準備するんで、ちょっと待っててください!
(数秒で帰る準備する)
よしっ!
できたっ!
お待たせしました。
じゃぁ……行きましょうか…。
せっかくだし、手、繋ぎます?
へへ。
先輩と手繋いじゃった。
…夢みたい。
(以下、耳元で)これから、先輩のこと、いっぱい教えてくださいね。
俺のことも、いろいろ教えますから。