【玄関扉の開閉音】
…ただいまぁ…。
疲れた…。
もう無理…。
何もできないし、したくない…。
お風呂も、ご飯も、何もかも…。
(重い溜息)はぁ…。
超最悪…。
なんで帰ろうとする人間捕まえて、仕事させるわけ?
「今日は無理です」って何度も言ったのに、アホみたいな量の仕事押し付けておいて、自分はとっとと帰っちゃうとか…。
マジでバカなの?
人間のクズでしょ!
あり得ないってのっ!
…ごめんなさい。
汚い言葉使いすぎた…。
イライラしてて…。
だって、今日は定時で上がるって約束したから、すっごくがんばって仕事したの。
嫌いな仕事もさっさと片付けたし。
でも、結局帰ってきたのはいつもと同じ時間…。
ちゃんと断れなかった俺も悪いんだけどさ…。
ご飯用意してくれてたのに、冷めちゃったよね…。
ほんとに、ごめんね。
えっ!?
ギューしていいの?
ほんとに?
ヤダ。
するに決まってんじゃん。
(彼女を抱きしめる)
んー……癒される…。
うん。
君も今日1日お仕事お疲れ様。
いっぱいお仕事がんばってたの、見ててくれた?
かっこよかった?
…少しは惚れ直してくれた?
えぇー!?
そこんとこは、『うん』って言うとこじゃん。
ふふ。
ありがとね。
…ちょっと元気出た。
(彼女の匂いを嗅ぐ)
お風呂入ったの?
ボディーソープと君の匂いが混じって、すっごくエッチぃ匂いがする。
甘くていい匂い。
俺この匂い、1番好き。
ダーメ。
動かないで。
今、癒されてるとこだから。
ん…?
ちょっと待ってっ!?
やめて。
お願いだから。
匂い嗅がないで。
まだお風呂入ってないから、ヤバイんだって。
『おあいこ』じゃなくて。
マジで無理だから、言ってるの!
もう……意地悪…。
お風呂入ってないから、汗臭いのに…。
そんなことなくないの。
男なんて、女の子と違って、何もしてなくても臭いんだから。
いくら大好きな君のお願いでも、ダメなものはダメなの。
お風呂上がり以外は嗅いじゃダメ。
絶対にダメ。
…ったく…。
そんなに嗅ぎたいなら、先にお風呂入ってくる。
自分の匂いが気になるってのもあるけど、仕事モードがオフになんない…。
お風呂入って、強制的にオフにしてくるよ。
その後に、ご飯食べるね。
いいよ。
自分で温めるし。
君も疲れてるんだから、先休んでて。
そう?
ご飯温めてもらってもいいの?
…じゃぁ、お言葉に甘えよっかな。
ありがとね。
いつもおいしいご飯作ってくれて。
(触れるだけのリップ音)
お風呂、行ってくるね。