年下男子、自分の家の鍵をなくしたお姉さんとの別れの朝

【アラーム音】

(※ 寝ぼけた感じで)ん……。
うるさい…。

(アラーム音を消す)

(あくび)ふぁ…。

ん?
おはよ…。

なんかいい匂いする…。

朝ご飯?
ありがと…。

顔洗ってくる…。

(※ 寝ぼけた感じ、ここまで)

んーっ!
顔洗ったら、スッキリしたっ!

うわっ!
なんかすごいことになってる…。
これ、全部お姉さんが作ってくれたの?

ご飯に、味噌汁、玉子焼き、サラダまで…。
めちゃくちゃ豪華な朝ご飯じゃん。
こんな朝ご飯、ホテルとか旅館でしか見たことないよ…。

実家にいた頃?
部活の朝練があったから、学校で弁当食べてた。
だから、こういう朝ご飯、(あこが)れてたんだ。

さっそく……いただきますっ!

あっ!
この味噌汁って、昨日約束してくれた具だくさんのヤツ?

ありがと!

(味噌汁をいただく)

うっま!
ヤバすぎない?
これ。

普通にお店出せるレベルじゃん。

いや、いや。
(謙遜けんそん)しないで。
ほんとに、うまい!

お姉さん、料理人だったりする?

そう思っちゃうほどにおいしいんだもん。
(出汁だし)()いてる中でも、具の素材本来の味が()かされてる。
こんなうまい味噌汁飲んだの、初めて…。

食レポっぽいことしちゃうくらい、うまいんだって!
ほっぺ、落ちちゃいそう…。

他のも、食べていい?

(他のご飯もいただく)

どれも、うまいよ。

お姉さんの料理さ……元彼さんも食べたの?

ふぅーん。

(小声で)この味知ってて、お姉さんと別れるなんてね…。
バカな奴…。

ん?
何も言ってないよ。
ほら、冷めないうちに食べちゃお。

(※以下、モグモグしてるのを適度に挟んでください)

ねぇ。
俺が寝てる間に買い物に行った?

行ってないの?

嘘だ…。
だって、冷蔵庫の中身だけでこんなに作れるはずないよ。
今、(ろく)な物、入ってないし。

えっ!?
マジで、行ってないの!?

お姉さん、すごすぎ…。
尊敬する…。
だって、俺も料理するけど、お姉さんみたいに、朝からこんなにたくさん作れないもん。
誰にでもできることじゃないんだから、もっと胸張っていいよ。

せっかくこんなにおいしい料理作れるんだし、お店、出したらいいのに…。

たとえば?
んー…そうだなぁ…。
朝ご飯専門のお店なんて、どう?

メニューは定食だけで、ご飯と味噌汁はおかわり自由。
メインのおかずを、魚と肉と野菜の中から1つ選べるようにして。
サイドメニューで、豆腐とか納豆とか追加できるようにするの。

いい考えだと思わない?

そっか…。
残念…。

でも、もしお店出すことになったら教えてね。
俺、毎日通うから。
絶対!

お姉さんの料理のファンだもん。
朝からこんなおいしいご飯食べれたら、どんなに大変な1日になっても乗り切れるくらい元気出そう。

(大袈裟おおげさ)じゃないって。
それくらい、うまいってこと。

あのさ、味噌汁のおかわり、ある?

じゃぁ、いっぱいおかわりしよっと。

(少し間を開ける)

ごちそうさまでした。

ふぅ…。
お腹いっぱい…。

すっごい幸せ…。

あっ!
片付けは俺がやるよ。

作ってもらった()()、片付けまでしてもらったら(ばち)が当たるよ。
それに、お姉さんの場合、片付けよりも先に管理会社に電話した方がいいんじゃない?

片付けよりも、そっちの方が大事でしょ?

ね?
俺に片付けは任せて。

(少し間を開ける)

電話、終わった?

それで、どうだった?

…よかったね。

(独り言っぽく)もう帰っちゃうんだ…。

帰る前にさ……1つお願いしてもいい?

……お姉さんの連絡先を教えてほしいなぁ…って…。

いいの!?
やった!

【スマホをタップする音】

これ、俺の連絡先。

【通知音】

ん。
ちゃんと届いたよ。
ありがとね。

それでさ……もしよかったら、今度ご飯行かない?
俺のバイトがなくて、お姉さんの都合がつく日に。

もっとお姉さんと話したいから…。
……ダメ…かな?

ほんとに!?
じゃぁ、今度連絡するね。

忘れ物はない?

駅まで送るよ。

いらないって、1人で平気?
道、分かる?
迷わない?

…ん。
分かった。

気を付けて帰ってね。

【鍵の解錠音】

【玄関扉の開く音】

バイバイ。
またね…。

【玄関扉の閉まる音】