泥酔して泣き出した彼女を慰める犬系彼氏

おかえりなさぁ~い
楽しかった?
って、うわぁ…。
珍しくかなり飲んだんだね。
足元ふらついてて危ないよ?
ここまで酔っぱらうのって初めてじゃない?
よく帰ってこれたね。
同じ方向の人と一緒にタクシーで帰ってきたんだ。

スン…スンスン
男物の香水がする。
一緒に帰ってきたのって男の人?
何もされなかった?
抱きしめられたり、キスされたり…。
そんなことするような人じゃないって?

(少し怒って)
男は表面ではそんな素振り見せないけど、頭の中じゃ君を襲ってるんだよ。
そういう生き物なんだよ。
もっと警戒心持ってもらわないと危なすぎるよ。
こんなんじゃ、外でお酒飲ませてあげられないな。

口を手で押さえて…もしかして、気持ち悪くなってきた?
トイレ、急いで!
やっぱり飲みすぎだよ。
吐くまで飲むなんて体に悪いよ?
泣くほど吐くの辛い?
もったいないけど、全部吐いちゃいな?
そしたら少しはすっきりするはずだからさ。
僕も背中さすって、ついててあげる。
そしたら辛いのも少しは落ち着くでしょ?

全部吐いて少しは楽になった?
はい、水。
水でも飲んで落ち着いた方がいいよ。

深刻そうな顔して、どうしたの?
…死にたい?
どうしたの、急に。
職場で何かあった?
僕でよかったら聞くよ?

名指しでクレーム言われちゃったんだ。
それは辛かったね。
結構きつい言葉で言われちゃったんだ。
職場の同僚の人は、君ががんばってるのちゃんと見ててくれて知ってるんでしょ?
味方になってくれる人がいるならいいじゃん。
同僚の人たちは気にしなくていいって言ってくれてるなら、気にしなくていいと思うよ。
僕も同僚の人たちの意見に賛成かな。
君は少し気にしすぎる傾向があるから、余計に辛く感じちゃうんだと思うよ。
うまく受け流しちゃうのが一番だと思うな。

じゃぁさ、もし、僕が死んじゃったら君はどう思う?
悲しいよね。
僕もそうだよ。
君が死んじゃったら悲しい。
君がいない世界は本当につまらないものだと思うもん。
それくらい君は僕の世界の中心的存在なんだよ。
君がいない世界はいらない。
君が死んだら僕も死ぬ。
それは嫌なの?
君が死んでも僕には生きろって?
すごい矛盾言ってくるね。

僕が死んだら君はどうするの?
僕の後を追って死ぬの?
君はさっき僕には生きろって言ったのに、自分は死んじゃうの?
僕は君には生きててもらいたいな。
僕が見られなかった世界を全部見てから死後の世界に来てほしいかな。
そこでいっぱい話を聞きたいな。
あんなことがあったよ、とか、こんなのができたんだよ、っていうのをね。
だから僕が死んでも君には生きててもらいたいな。

(小声で)
いろんな思いを相当溜め込んじゃってたのかな。
気付いてあげられなくて、ごめんね。

君はお仕事をがんばりすぎたの。
君はいつも全部抱え込んじゃうよね。
嫌な仕事でもがんばっちゃう。
それが自分にとってかなりのストレスになってることを知ってても。
そして、ストレスを溜めに溜めて、ドッカーンって爆発させるタイプ。
ストレスを小出しにうまく発散させられないタイプ。
爆発させた時、君は今みたいに泣いちゃうんだろうね。

今日はお酒が入って、頭の中がぐちゃぐちゃになって、わけわかんなくなって、辛い気持ちが決壊しちゃったのかな。
僕なら受け止めてくれるって思って、泣いて訴えてきてくれたって思ってもいい?
よしよし。
もう泣かないの。
僕はここにいるよ。
君の周りが敵だらけになっても、君には僕がいる。
僕という味方がいるから。
安心していいんだよ?
嫌なことがあったら僕にぶつければいい。
辛いことがあったら僕に吐き出せばいい。
二人で半分にすれば、嫌なことも辛いことも半分で済むでしょ?
そうすれば、もう少し楽に生きられると思うよ?
君ががんばってるのは僕も知ってる。
毎日すごいがんばってる。
偉い、偉い。
頼りないかもしれないけど、もう少し僕を頼って?
僕は君の彼氏なんだから。
君は一人じゃないよ。
僕がいるから。
辛い時は心の中で僕を感じて?
僕が側についているって思うだけで少しだけ耐えられる気がしない?

やっと笑ってくれた。
君は笑顔が一番だよ。
君の笑顔を守るためなら、僕はなんだってするから。
君は僕の宝物。
誰にも傷つけさせやしないから。

(耳元で)
大好きだよ。
チュ。