(長いエッチな感じのリップ音)
【スマホの通知音】
ん…ダメ…。
スマホ鳴ってるけど、気にしないで。
今は俺だけ見て。
ね?
(長いエッチな感じのリップ音)
【スマホの通知音】
うるさいなぁ…。
誰か知らないけど、俺達の貴重な時間、邪魔しないでよ。
こら。
よそ見しちゃダメ。
俺だけ見てって言ったでしょ?
どうしても見るの?
……分かった。
すぐ戻ってきてね?
(人妻がスマホを操作している)
(少し間を開ける)
ねぇ、まだ?
もう待てないんだけど。
って、何してるの?
旦那さんに返信?
なんで?
旦那さんとは冷え切った関係になってて、お互い干渉してないって言ってたじゃん。
だから、別に連絡しなくていいんじゃないの?
『そうはいかない』ってどういうこと?
俺だけを好きでいてくれてるんじゃないの?
この間言ってくれたじゃん。
『大好きだよ』って。
あの言葉、嘘なの?
嘘じゃないなら、予定通り、今日は泊って。
お願い…。
俺を一人にしないで?
どうしても帰るの?
こんなに俺がお願いしても?
分かった。
わがまま言ってごめん。
別に拗ねてないもん。
拗ねたって、お姉さんは俺のものになることはないの分かってるもん。
どこまでいっても、お姉さんは旦那さんのものだから。
俺に勝ち目はないもん。
…仮に勝ち目があるとするなら、それは旦那さんと出会う前しかない。
もっと早くお姉さんと出会っていたかったな…。
(気分を切り替える感じで)
シャワー浴びておいでよ。
帰らないといけないんでしょ?
ほら、早く!
【浴室の扉の開閉音】
【シャワーの音】
(溜息)はぁ…。
口ではあんなこと言ってるくせに、口元嬉しそうだった。
どんなに『好き』って言ってくれても、結局、心は旦那にあるんだもんなぁ。
自覚してないのが、質が悪い。
レスっぽいのは何となく本当っぽいけど、仲が冷え切ってるのは嘘だろうなぁ。
都合がいい時に会えるだけの男なのかな?
俺って…。
それでも俺はいいけど、嘘は吐いてほしくなかったなぁ。
そうだ!
少しくらい意地悪してもいいよね。
お姉さんが嘘を吐いて俺を傷つけた罰だよ。
少しは困ればいいんだ。
そうすれば、俺の気持ち、分かってくれるよね?
(人妻が浴室から出てくる)
【浴室の扉の開閉音】
スッキリした?
よかったね。
ほら、服。
湯冷めする前に、ちゃんと着て。
うわ!もうこんな時間。
急いで!
時間ないよ。
早くメイクしないと。
お姉さん、メイクに時間かかるんだから。
それにしても、いつも見てて思うけど、器用にメイクするよね。
女の人ってすごい。
たくさんのメイク道具、使いこなしてるんだもん。
マジ、尊敬する。
それにしても、お姉さんっていつも俺の家から帰る時って綺麗でギラギラした感じのメイクだけど、それって、旦那さんの好み?
『なんで?』って、お姉さんが俺の家に来てくれる時って、いつもナチュラルでかわいい感じのメイクじゃん?
俺、あのメイク好きなの。
でも、帰る時のメイクは俺の知らないお姉さんって気がして苦手で…。
ただ、メイクが違うだけで、お姉さんはお姉さんだって分かってるよ。
でも、どうしても受け入れられない。
俺の手の届かないところに行って、もう戻ってこない気がしてならなくて…。
とてつもない不安に襲われるんだよ。
お姉さんに会えなくなったら、俺、もう生きていけない。
それくらいお姉さんが好きだから。
旦那さんと別れてなんて言わない。
そんなめんどくさいこと言って、お姉さんに嫌われたくないから。
(全力で甘えて)
俺は二番目で構わない。
だから、また会ってくれるよね?
また来てくれるよね?
絶対に?
本当?
ちゃんと俺の目を見て約束して?
お願い。
……ありがと。
(気分を切り替える感じで)
メイク、できた?
うん。いつもの綺麗なお姉さんだ。
服は乱れてない?
忘れ物してない?
大丈夫?
それじゃ……またね……。
【玄関のドアの開閉音】
…行っちゃった。
いつも以上にあっさり帰っていったなぁ。
さすがにあの態度はショック受ける…。
否定してたけど、あのメイク、旦那の好みだろうなぁ。
やけに嬉しそうだった。
でも、お姉さんは気付いてない。
ブラに俺の使ってる香水を少しだけ付けたことを。
きっと旦那、驚くだろうなぁ。
そして、お姉さんはショックを受けるんだろうなぁ。
これがきっかけで、別れちゃえばいいんだ。
俺だけの物になるために、早く戻っておいで。