ただいまー
あ゛ぁ゛~、疲れた…。
今週も地獄だった…。
あれ?
なんか上機嫌じゃん。
いいことでもあった?
大事な話?
何?
(相槌を数回)
えっ…妊娠…。
本当に?
えっ…どうしよう…。
病院行ってきたの?
行かずに、検査薬で調べただけなんだ。
ここに俺達の子がいるの?
マジで?
そっか…。
……順番、逆になってごめん。
俺としては、ちゃんと順番守りたかったんだけど、できちゃったなら、仕方ないよな。
結婚しよう。
今日の日付?
えっと……4月1日だっけ?
(彼女がネタばらし)
はぁ!?
全部、嘘!?
マジか…。
(念を押すな感じで)
本当に全部嘘なの?
(溜息)はぁ…
(かなり怒って)
俺、晩飯いらない。
食べる気、なくした。
全部お前のせい。
もう寝る。
【ベッドルームのドアを強く開閉する音】
(少し間を開ける)
【ベッドルームのドアをおそるおそる開ける音】
(まだ怒ってる感じで)
何?
俺、今すごい気分悪いから、あっち行ってて。
今、お前の顔見たくない。
話もしたくない。
だから、あっち行ってて。
お前があんな嘘 吐くと思わなかった。
(溜息)はぁ…
もうお前とこれからもやっていく自信ないから、俺達別れよう。
ここが潮時なんだよ。
俺、明日荷物まとめて、ここ出ていくから。
ここに住み続けるのも、引っ越すのもお前の自由だよ。
今までありがとな。
行くあてはないけど、当面はホテルに泊まればいいだろ。
金さえあれば何とでもなるから。
(少し間を開ける)
なんてな。
俺からもお返しのエイプリルフール。
驚いただろ?
怒るなよ。
それ、さっきの俺の気持ち。
それだけ俺もショックだったんだから。
分かったか?
泣くなって。
ギューしてやるから、おいで。
(彼女を抱きしめる)ギュー
さっき、お前から妊娠の話聞かされて、エッチする時、ちゃんとゴムしてたけど、ゴムも避妊100%ってわけじゃないから、妊娠の話も納得したんだよ。
俺も親になるのかって、ちゃんと覚悟決めなきゃいけないって思った。
お前との付き合いもそれなりに長いし、結婚もそろそろ…って考えてたしな。
それが『嘘でした』なんて言われたら、頭にくるだろ?
さっきはマジでキレてた。
怖かったよな?
ごめんな。
でも、あんな嘘は今後一切、マジでやめて。
ああいう嘘、俺好きじゃない。
ん?
俺の嘘もきつかった?
そりゃ、俺が受けたショックに匹敵するくらいのショックをお前に与えようと考えたからな。
怖かった?
ごめん。
やりすぎた…。
怖がらせるつもりは全然なくて、少しお灸を据えるくらいのつもりだったんだけど、思った以上に感情的になりすぎた。
俺、帰ってきてから、ずっとお前を怖がらせてばかりだな。
本当にごめんな。
もう怖がらせたりしないから。
約束する!
(彼女を甘やかす感じで)
そもそも、俺はお前と別れるつもりはないよ。
俺がお前のこと、めちゃくちゃ好きなの知ってるだろ?
『ずっと一緒にいよう』って、いつも言ってるじゃん。
だから、ここを出ていくこともしない。
ここ出たところで、ホテルにずっと泊まるわけにもいかないし…。
俺に貯金がないの、お前が一番よく知ってるじゃん。
だから安心して?
ずっと一緒だよ。
あと、いつかちゃんとプロポーズするから。
さっきみたいなのじゃなくて。
ちゃんとやり直させて?
あ~ぁ、顔ぐちゃぐちゃ。
ほら、涙拭いて。
そんなに泣く程、俺のこと好き?
お前の口から聞きたいから。
ねぇ、言って。お願い。
ありがと。
俺も、お前のこと大好きだよ。
(リップ音)チュ
仲直りして、落ち着いたら腹減ってきた。
今日の晩飯、何?
えっ、俺の好物ばっかりじゃん。
どうして?
俺が怒ると見越して、先に手を打ってた、と…。
ってか、俺が食べ物で釣れるとでも、思ったか?
(呆れた感じで)
ったく…。
そんなにいっぱい作ったら時間も手間もかかっただろ?
今回だけは許してあげる。
でも、次は絶対許さないから。
次やったら、お仕置きな。
何するかは、その時決めるから。
お仕置きされたくなければ、金輪際あんな嘘は吐かないこと。
いいな?
ん、いい子。
(気を取り直す感じで)
さぁ、一緒に晩飯の準備しよう。
あぁ~、マジで腹減ったぁ~。
(二人でベッドルームから出る)
【二人の足音】