ただいま。
ん?
何…この甘ったるいような、焦げたような匂い…。
まさか…っ!
(玄関からリビングに移動)
うわぁ…派手にやらかしたな…。
キッチン、ドロッドロ…。
せっかく昨日掃除したのに…。
匂いの正体はチョコと
うわっ…この鍋まだ新しいのに…。
全部やりっぱなしで、材料も出したままだし…。
ぐちゃぐちゃにした
どうせキッチンをこんな状態にしたから怒られると思ってるんだろうな…。
ほんと、いつもいつも言うこと聞かないんだから…。
作らなくていいって言ったのに…。
おーい。
隠れてないで出ておいで。
怒ってないから。
…出てくる気配なし…。
(溜息)はぁ…。
今から5秒以内に出てこなかったら怒るよ。
5…4…3…2…1…。
やっと出てきた。
(彼女を抱きしめる)
ただいま。
指切ったり、ヤケドしたり…。
してない?
ほんとに?
手、見せて?
…よかった。
チョコ作ろうとしてくれたんでしょ?
見れば分かるって。
そこら中チョコが飛び散ってて、鍋が
料理苦手なのに無茶なことするんだから。
何作ろうとしてたの?
…ふぅーん。
で、なんで鍋があんなに黒こげになってるの?
まさか、チョコを
あぁ…もう…。
チョコは
耐熱ボウルに入れてレンジでチンするか、湯せんして溶かさないと。
えっ!?
完成したの!?
そりゃ驚くでしょ。
あんな
(小声で)どれだけのお金と材料を無駄にしたんだから…。
ん?
何も言ってないよ。
完成したの、どれ?
見せて。
おぉ…もっとひどい感じを想像したけど、ちゃんと形になってるじゃん。
すごい、すごい。
怒らないでよ。
仕方ないじゃん。
キッチンをあんなに汚して、チョコを
せっかくだし、ひとつ味見してみよっかな。
いただきまーす。
(チョコをひとつ食べる)
うん…わりといけるかも。
ちょっと
嘘じゃないって。
ほんとだよ。
ほら、こっち向いて。
(触れるだけのリップ音)
ね?
ちゃんと甘い。
『うぇー』って何?
そんなに
そこまで
君の愛情がいっぱいこもってるから。
だって、俺のために君がいっぱいがんばってくれたんでしょ?
料理苦手なのに、レシピ見つつ自分なりに精一杯がんばった結晶じゃん。
(彼女を抱きしめる)
俺のためにがんばってくれて、ありがと。
あっ!
でも、これだけは約束して。
料理したいなら、次からは俺と一緒にすること。
今回は
無事なの確認するまで、めちゃくちゃ心配したんだよ。
いい?
ん。いい子。
さてと…キッチン片付けなきゃ…。
とはいえ、片付けてたら晩ご飯遅くなっちゃうし…。
かと言って、片付けずに晩ご飯作る気にはなれないし…。
んー……久しぶりに外食しよっか。
何、食べたい?
君が決めていいよ。
その代わり、帰ってきたらキッチンの片付けだからね。
『えぇー』じゃない。
作らなくていいって言ったのに作ったのは君なんだから、君が片付けするのは当然でしょ。
もう…。
あからさまにシュンとしないでよ。
1人でやらせるわけないじゃん。
俺も一緒にやるから。
でも、一緒に片付けるのは今回だけだからね?
さっきした約束破って、1人で料理してキッチン汚したら次は1人で片付けだからね?
いい?
ご飯、何食べに行くか決めた?
うん。いいよ。
じゃぁ、行こっか。
……あっ、待って!
もう1つ言いたいことがあったんだった。
ちょっと耳貸して。
(以下、全文耳元で)全部終わったら、イチャイチャするのも忘れないでね。
せっかくのバレンタインだもん。
いっぱい楽しもうね。