(スマホのアラーム音)
ん……うるさいなぁ……。
…朝か。
…体、だるい。
でも、起きなきゃ。
デートの時間に遅れる。
あれ?
体に力入らない?
ちょっと熱っぽい感じもする。
どうしよう…。
とりあえず体温測ってみるか。
(少し間を開ける)
うわ…。
見なきゃよかった…。
こんなに熱あるなんて。
とにかく彼女に連絡しなきゃ。
【スマホをタップする音】
『ごめん。今日、デート行けない』
ふぅ…。
なんか…ヤバい…かも…。
(寝息)……すぅ…すぅ…
(少し間を開ける)
(目を覚ます)
ん…あれ?
どうして君がここにいるの?
確かにデート行けないって連絡したけど。
心配で来てくれたんだ。
ありがとう。
嬉しい。
(咳)コンコン
ごめん、咳出てきたからマスク取ってもらっていい?
俺の鞄に入ってるから。
ありがとう。
朝起きたら、体がだるくて、力がうまく入らなくて。
それで、熱測ってみたら、思った以上に熱あって。
君には申し訳ないと思ったんだけど、デートのキャンセルさせてもらったんだよ。
ごめんね。
水族館行くの、君すごい楽しみにしてたから…。
(徐々に苛ついて)
『そんなことない』って…。
嘘、吐かなくていいから。
雑誌買ったりして、いろいろ下調べしてたの知ってるから。
『どうやって回ろうかなぁ』って悩んでたの知ってるから。
水族館のフードコートの食事まで調べて、『あれ食べたい』とか『これも捨てがたい』とか言ってたじゃん。
俺が何も知らないと思った?
何で俺に嘘、吐くの?
嘘、吐かないでよ。
ねぇ、なんで?
ねぇ、どうして?
うるさい!
黙れっ!
君の言葉は聞かない!
また、嘘、吐くんだもん。
(子供のように)
あー!あー!あー!
何も聞こえないー!
嘘つきの言葉なんて聞きたくない!
(少し間を開ける)
(彼女が帰ろうとする)
…帰るの?
なんで?
俺が怒ったから?
俺がわがまま言ったから?
俺がひどいこと言ったから?
やだ…帰らないで。
待って。
お願い。
まだ帰らないで。
俺を一人にしないで。
ごめん。
ごめんなさい。
もうわがまま言わないから。
もうひどいこと言わないから。
だから、帰るって言わないで。
君が、嘘 吐いてないってこと分かったから。
だから、帰らないで。
お願い。
…まだ俺の側にいてよ。
今一人になるのは嫌だ…。
一人になるの、怖いんだもん…。
お願い、側にいて。
ギューってして?
…ギュー。
ありがとう。
なんだか自分でもよく分からないんだけど、感情がうまくコントロールできない。
こんなの初めてで、どうしていいのか自分でも分かんなくて。
弱っているところ見られるの、家族以外では君が初めてだからかもしれない。
君に当たるようなことしちゃって本当にごめんね。
熱がちゃんと下がったら今日のデート、やり直させてもらってもいい?
…ありがとう。
君が嘘 吐いてないの分かってるはずなのに、口からは全然違うこと言っちゃって、君を傷つけて…。
熱でおかしくなっちゃってるのかな?
そうなのかな?
でも、熱のせいにしちゃダメだよね。
君を傷つけたのは俺なんだもん。
…元気になったら、ひどいこと言ったお詫びしたいんだけど、何か俺にできることある?
どこにでも連れて行ってあげるし、何でも買ってあげる。
今日行きたかった水族館で売ってるペアのストラップ?
これが欲しいんだ。
へぇ。
これ持ってると『ずっと一緒にいられる』っていうジンクスがあるんだ。
いいね。
水族館に行ったらこれ、買おうね。
それで携帯にお揃いで付けようね。
そうと決まったら早く風邪なんて治さなきゃね。
早く治るおまじない?
何?
目を瞑ればいいの?
…これでいい?
(小さいリップ音)チュ
キス…してくれた?
俺の風邪うつっちゃうよ?
マスク越しだから大丈夫なの?
本当に大丈夫?
心配だなぁ…。
君、すぐ風邪引くじゃん。
でも、君が俺の風邪うつっちゃったら、元気になった俺が君を看病すればいいよね。
そしたら、いっぱいお世話してあげる。
今日は君にいっぱい甘えさせてもらうね。
ありがとう。
大好き。