クリスマスの夜にぼっちになってしまった彼女の暗い気持ちを晴れさせようとしてくれるチャラいサンタ

(部屋の窓を叩く音)

(彼女、窓を開ける)

こんばんは。
通りすがりのサンタでーす。

君にプレゼントを渡すためにやって来ました。

(彼女、疑う)

嘘じゃないよ。
この真っ赤な服を見れば分かるでしょ?
本物のサンタだって。

ね?
信じてくれた?

なら、そろそろ、中に入れてくれない?
外マジで寒くて…。
…お願いっ!

なっ…!?
部屋に入って襲うとか、そんな非常識なことしないよ。
絶対君に手は出さないのと、5分以内に部屋から出てくって約束する。

うん。
絶対。

ありがと。

(サンタ、部屋の中に入る)

あぁ…寒かったぁ…。

分かってるって。
プレゼント渡したら、さっさと出てくから。

(咳払い1回)コホン。
では、改めて…。

…君に渡すプレゼントは、俺のじ・か・ん。

ふざけてない。ふざけてない。
いたって真面目だよ。
今の君に必要なものは、話を聞いてくれる相手。

…最近、結構キツいことあったんじゃない?
話、聞くよ?

(彼女、『話したって解決しない』と拒否る)

そうだね。
君の言う通り、俺に話したところで解決なんてしない。
でもさ、胸の中にモヤモヤしたものを今会ったばかりの俺に全部ぶつけてスッキリした方がよくない?

こういうことは何も知らない他人の方が話しやすいだろうし…。

ね?
話してみて?

(彼女、話し始める)

(サンタ、相槌数回)

何、それ?
元彼ひどくない?
普通にあり得ない。

こんな話聞いて怒らずにいらんないよ。

俺が君の立場だったら、2、3発往復ビンタお見舞いしてるね。
バチン!バチン!って、ほっぺがパンパンに腫れるくらい。

こーんな感じで。

ふふ。
やっと笑ってくれた。
やっぱり君は笑った顔の方がいい。

……元彼とのことは黒歴史だと思って忘れちゃお。
それが1番。

ほら、よく言うじゃん。
厨二病みたいな黒歴史は忘れてしまうに限るって。
それと同じ。

で、少し恋愛はお休みしよ。
君の心が回復してまた恋してもいいって思えるまで。

次の恋はきっといい恋ができるよ。

たしかに、未来のことは誰にも分かんない……けど、俺には分かる。
君はきっといい恋ができる。

断言できるよ。
だって、サンタの俺が言うんだよ?
幸せの運び人の俺が。

信じてないね?
だったら、俺の手に君の左手を乗せて。

ちょっとした手品見せてあげる。

(彼女、サンタの手に自分の手を乗せる)

(祈りを込める感じで)次の恋が君にとってとびきり最高の恋になりますように。

(サンタ、彼女の左手に指輪をはめる手品をみせる)

はい。
追加のプレゼント。

幸せを呼ぶ指輪。
お守りみたいなものだと思って。

……恋すること、やめないでね?

紙とペン借りてもいい?

(書きながら)もし恋することをやめたくなったら、ここに連絡して。

この番号は俺のプライベートナンバー。
朝でも昼でも夜でも、いつでも電話して。
おしゃべりの相手をしてほしい時とか、寂しくなった時とかでもいいよ。
とんできて、話聞くから。

それじゃ…俺の出番はここまで。
素敵な夜を過ごしてね。

…メリークリスマス。

(サンタ、退室する)