(玄関扉の開閉音)
ただいまぁ。
ん。
これ、あげる。
バレンタインのチョコだって。
甘いの苦手だって言ってんのに、渡してくるんだもんなぁ…。
マジでどうにかしてほしいよ…。
(彼女、彼氏が貰ったチョコを広げる)
ん?
有名店のチョコもあるの?
あぁ…ここのヤツ、前に『食べたい』って言ってたよね?
そりゃ、覚えてるよ。
彼女の好みは何よりも大事なことだもん。
……こういうの見ると、女の子たちってすごいわ…。
義理とはいえ、こんなに力入れてるんだもん。
男は義理にこんなに力入れないと思う。
少なくとも俺はやんないね。
それよりも……(「ちょうだい!」な感じに)んっ!
俺にチョコないの?
朝から楽しみにしてたんだけど…。
甘いのは苦手でも、君から貰えるなら話は別。
大事にいただきます。
だから……んっ!
えぇー!?
ないの!?
(めちゃくちゃ凹んで)……あぁ…もうダメ…。
やる気なくなった…。
ご飯食べれないし、お風呂も入れない…。
……明日、仕事休む…。
無理ったら無理っ!
君からのチョコがないんじゃ、がんばれない!
(急に元気になって)……別の物?
何?何?
(彼女、彼氏に用意してた物を渡す)
……ありがとう。
開けてもいい?
(包装紙を開けて、中身を見る)
……ネクタイ?
甘いのが苦手だって知ってたから、あえてネクタイにしてくれたの?
…もう……大好きっ!
(彼氏、彼女を抱きしめる)
うぅん。
変じゃないよ。
むしろ、すっごい気に入った!
自分で選ぶと、だいたいいつも同じような色や柄を選んじゃうからさ…。
いつもと違う色や柄で、新鮮な感じ。
どう?
似合う?
よし!
明日、このネクタイして仕事行く。
早速、皆に見せびらかして自慢するためにね。
(ドヤァな感じで)「どうだ!彼女から貰ったんだぞ!いいだろう!」って。
うん。
君のおかげでやる気出まくった。
ずっと君がそばにいてくれるみたいで、やる気120%だよ。
じゃぁ、俺からも。
お返しね。
…なんでお返ししちゃダメなの?
どうしても今、お返ししたい!
お返しさせてくれなきゃヤダ!
…ホワイトデーはホワイトデーでちゃんとお返しするよ。
今からするお返しは、俺のこといっぱい考えて選んでくれたお礼。
お礼でもお返ししちゃダメなの?
そっか…。
ダメか…。
……でもさ、とりあえず、聞くだけ聞いて。
ね?
それから考えても遅くないでしょ?
で、お返しっていうのは……(耳元で)チョコくらい甘くてドロッドロになる時間を君にあげる。
ちょうど週末だし…。
(意地悪に)…お返し、いる?いらない?
ふふ。
『いる』っていう選択肢しか与えない言い方するのは、君に意地悪するのが好きだから。
男はいくつになっても、好きな子をいじめちゃうの。
自分のことでいっぱいになってほしくて…。
あっ……ほらね?
今、俺でいっぱいになって、溢れてるでしょ?
…分かるよ。
君を見てれば。
俺でいっぱいになって溢れると、顔とか雰囲気が変わって、エロい感じになるんだよ。
自分では分かんないのが、いいの。
分かったとしても、抑えらんないようにするからいい。
もっともっと俺でいっぱいになって、エッチくなって?
俺もなるから…。
(濃厚なキス)※キスしたままフェードアウトしてください。