ただいまー。
ご飯作ってもらっちゃってごめんね。
同棲始める時に「当番制にしよう」って言ったのは僕なのに、ここんとこ全然できなくて…。
うぅん。
よくないよ。
最初に決めたルールだもん。
明日こそは残業せずに帰ってこれるようにするね。
今までのお
リクエストある?
ん。
分かった。
腕によりをかけるから、楽しみにしてて。
(カバンから折り紙が落ちる)
あっ……拾ってくれて、ありがと。
これ、かわいいでしょ?
今日ね、子供たちと折り紙をして遊んだんだ。
その時にもらったの。
たまに作るけど、意外と難しいよね。
折り紙って。
幼稚園の先生だからって、何でも作れるわけじゃないよ?
本見なくて作れるのは、鶴くらい。
それ以外は作り方の本見ながらじゃないと作れないもん。
それに、本に『誰でも簡単!』って書いてても、僕にとっては全然簡単じゃないんだよね…。
どう作っても
笑い事じゃないんだよ?
『先生、下手くそー!』って子供たちにバカにされるんだから。
で、話を戻すけど…。
ある女の子が『ハート作りたい!』って言い出して、「じゃぁ、皆でハートを作って大好きな人に渡そう」ってことになってね…。
ん?
くれた子?
女の子だけど…?
もしかして、嫉妬?
ヤダ。
やめてよ。
相手は子供だよ?
僕が本気にするわけないじゃん。
それに、幼稚園くらいの子の”好き”は憧れとか好意に近いんだよ。
僕たち、大人の言う”好き”とは違うんだから。
なんか、やけにつっかかってくるけど……もしかして、君も子供の頃、先生に恋してたとか…?
へぇー。
『先生、大好き!』とか言って、チューしたり…?
ふぅーん。
その先生が、初恋だったんでしょ?
君の反応見れば、なんとなくでも分かるって。
顔に出てるしね。
別に無理して言い訳しなくていいよ。
子供の頃のことだし、時効でしょ。
怒ったりしないよ。
だとしても、自分のことは棚にあげて、子供相手に嫉妬するなんて…。
僕の彼女は心が狭かったんだ…。
知らなかったなぁ…。
ちなみに言っとくけど、僕はチューされてないからね?
……手、出して。
いいから、早く。
はい。
コレ、あげる。
僕が折ったハート。
左右非対称でハートに見えないかもだけど、不器用なりに一生懸命気持ちを込めて折ったの。
君に大好きが伝わるように。
『ありがと』って、それだけ?
僕も、君からの大好きが欲しいんだけど。
折り紙じゃなくて、もっと他のものがいい!
分かるでしょ?
……鈍感。
(濃厚なリップ音)
コレが欲しいの。
次は君からして?
今のはノーカン。
僕からしたからね。
君からしてくれなきゃ意味ないの。
大好きの気持ち、いっぱい僕にちょうだい。