鈴鳴れん
voice:鈴鳴れん
悠希チヒロ YUUKI CHIHIRO CH
voice:悠希チヒロ YUUKI CHIHIRO CH

SNSで知り合った人妻を好きになっちゃった年下男子

【スマホの通知音】

『待ち合わせ場所に()きました』か…。

えっと……あっ、いた!

(人妻に駆け寄る)

初めまして。
道、(まよ)いませんでした?
大丈夫でしたか?

こんなに人がいるから、見つけられなかったらどうしようって少し不安になっちゃいました。
でも、すぐ見つけられて、ホッとしてます。

ん?
なんですか?
俺の顔に何か付いてますか?

汗?
えっ…(うそ)…。

うわぁ…かっこ(わる)…。

実は、すごく緊張してて…。
SNSで知り合った人と実際に会うのって初めてだから。

(人妻に手を取られる)

えっ、ちょっと待って!
どこ行くんですか?

(喫茶店きっさてん)
なんで?

水分補給…?

()(つか)ってもらって、すみません。
ありがとうございます。

それなら、俺のお気に入りの(喫茶店きっさてん)に行きませんか?
いい店知ってるんです。

ね?
行きましょ?

(喫茶店に入る)

レトロな感じで落ち着いた空間で、いい(雰囲気ふんいき)でしょ。
しかも、(穴場あなば)だから、人もあんまり来なくて静かなんです。

ここのおすすめはカフェラテなんだけど、きっと(おどろ)きますよ。

(店員を呼び、注文する)

コーヒーとカフェラテを。
あと、(いちご)のミルフィーユを2つ。

(店員が離れる)

確か、(いちご)好きって言ってましたよね。
ここ、ケーキも(美味おい)しくて、注文した(いちご)のミルフィーユはマジで(美味おい)しいんですよ。
おすすめしたカフェラテとすごく()うんです。

(ケーキと飲み物が到着)

じゃぁ、いただきましょうか。

【手を合わせる音】

いただきます。

んん~、(美味おい)しい。
やっぱりここのミルフィーユは絶品。

どうしたんですか?

あぁ、これですか。
カフェラテ頼んだら、ふわふわの牛乳の(あわ)でネコの(3Dスリィーディー)ラテアートを作ってくれるんですよ。
かわいいでしょ。
(おどろ)きました?

写真ばかり撮ってないでミルフィーユ食べてみてください。

…どうですか?

(美味おい)しい?
でしょ!
カフェラテも飲んでみて。
ふわふわの牛乳の(あわ)が美味しいの。

…どう?

よかった。
絶対気に入ってくれると思ったんだ。

…って、ごめんなさい。
俺、テンション上がっちゃって敬語忘れてました…。

『敬語やめて』?
本当に敬語じゃなくていいんですか?

…お姉さんがそう言うなら、敬語やめる。

あっ、ちょっと待って。
(口角こうかく)に牛乳の(あわ)が付いてる。
取ってあげるから、じっとしてて。

はい、取れた。

ふふ、かわいい。

お姉さんの方が年上なのに、年下みたい。

ミルフィーユ食べて幸せそうに笑ったり、ラテアートで感激したり…。
表情がコロコロ変わって、すごくかわいい。

ねぇ……俺と付き合ってくれませんか?

なんでダメなの?
好きな人がいるの?

…『結婚してる』?
嘘…。

でも、俺は引かないよ。
(あきら)めなきゃいけないことだって分かってる。
(旦那だんな)さんがいるんだから、俺なんかが(はい)()(余地よち)がないことくらい、分かってる。
分かってても、お姉さんを(あきら)めることなんかできない。
メッセージのやり取りもいつも(丁寧ていねい)に返してくれるし、実際会って、話してみても、『笑顔が素敵だなぁ』、『一つ一つの(仕草しぐさ)がかわいいなぁ』って思いが(つの)るばかり…。

……お姉さんが好き。
お姉さんの全部が好き。

今日みたいに(都合つごう)がつく時で(かま)わない。
連絡も今まで通り、たまにしてくれるだけでいい。

だから、また会ってくれない?

今日が最初で最後なんて嫌…。
お姉さんにもう会えなくなるのは嫌…。
そんなの俺、()えられないよ…。

だから、お願い。
また会いたい。
俺からお姉さんを取らないで。
お姉さんを好きな気持ちを(うば)わないで。

……お願い。

いいの!?
ありがとう。

結果的にわがまま言っちゃってごめんなさい。
でも、嬉しい。

(内緒話してる感じで)
この関係は(内緒ないしょ)ね。
俺とお姉さんの二人だけの秘密。
絶対誰にも言っちゃダメだよ?

約束……ね?