おはよ。
顔、洗っておいで。
(彼女が顔を洗って戻ってくる)
ご飯できてるから準備するね。
えっ…いらない?
食欲ないの?
でも、少しくらいお腹に入れないとお昼までもたないから…。
軽く食べられる物、何かなかったっけ?
【冷蔵庫を開ける音】
あっ、ヨーグルトならあるから、食べる?
(彼女が怒る)
…ごめん。
そんなに怒らないで?
余計なことして、ごめんね。
コーヒーだけ、置いておくね。
【テーブルにコップを置く音】
少し甘めに作っておいたから、少しは糖分摂取できると思うよ。
ここからは俺の独り言だと思って聞き流してくれていいから。
食べたくないかもしれないけど、ご飯、少しでいいから食べてほしいな。
無理矢理食べるのは辛いと思う。
でも、これからお仕事でしょ?
食べないと元気出ないから…。
(焦って)
ちょっと、何で泣くの?
俺、なんか君が泣きたくなるようなこと言っちゃった?
『どうして優しいの』って…君を理解してるから。
(言いにくそうに)
あのさ……そろそろ女の子の日、近いでしょ?
いつもの君は、人に対して敵意を剥きだしにするようなタイプじゃない。
でも、女の子の日が近くなると、感情がコントロールできなくなるのか、イライラしたり、不安になったり。
食欲なくなったり、逆にめちゃくちゃ食べたり。
その時々で全然違う様子になる。
最初は俺もわけ分からなかったんだよ。
『どうして君はイライラしてるんだろう?』『何で落ち込んでるんだろう?』って。
それで調べたんだ。
そしたら、女の子の日が近いと君みたいな症状が出る子がいるって知った。
原因が分かったら俺は君がなるべく快適に日々を過ごせるようにサポートするって決めたんだよ。
イライラしてるなら、なるべくイライラさせないようにしよう。
不安なら、少しでも不安を取り除けるように側にいてあげよう。
食べたくないなら、少しでも食べやすい物を食べさせてあげよう。
めちゃくちゃ食べちゃうなら、カロリー控えめな物を食べさせてあげよう。
だけど、やっぱり難しいね。
君をサポートするなんて偉そうなこと言ったけど、全然うまくいってない。
ごめんね。
ほら、涙を拭いて。
いつまでも泣いてたら会社に行けなくなっちゃうよ。
泣き顔のまま会社に行くの?
(耳元で)
俺のかわいいお姫様、そろそろ泣き止んでくれませんか?
ん、泣き止んだね。
いい子。いい子。
さぁ、会社に行く準備しようね。
って、服の裾、離してくれないかな?
俺、朝ご飯の片付けしないといけないんだけど…。
君だって、会社に行く準備が…。
『ありがとう』って…。
その言葉はいらないよ。
だって、俺たちは恋人なんだよ?
どちらかが困ってたら、支え合って乗り越えればいいだけなんだよ。
君は知らないだろうけど、俺だって君に支えてもらってるところ、たくさんあるんだよ。
一つ目は、君の笑顔に支えられてる。
疲れて帰ってきても、君が笑顔で『おかえり』って言ってくれるから、その日の疲れなんか吹き飛んじゃう。
二つ目は、君の優しさに支えられてる。
仕事で怒られたり、失敗して落ち込んでる時、君は俺をそっと抱きしめてくれる。
『大丈夫だよ』って言いながら、何も聞かずに、君の温もりで包んでくれる。
三つ目は、君の雰囲気に支えられてる。
些細なことで苛ついてても、君の柔らかな雰囲気が、いつの間にか苛ついてた気持ちを和らげてくれてる。
『何であんなことで苛ついてたんだろう?』って、俺の頭を冷静に引き戻してくれる。
他にもたくさんあるけど、今は時間がないからここまでね。
とにかく、お互いがお互いに助けられてる。
だから、『ありがとう』はいらないの。
いい?
よし、いい子だね。
ほら、のんびりしすぎて、遅刻ギリギリの時間になってるよ。
(彼女が急いで準備するためリビングを離れる)
(独り言で)
辛いのも、もうすぐ終わるからね。
今日も一日、がんばろうね。